ポートレート撮影は、人物の魅力や表情を引き出す写真ジャンルとして人気があります。美しいボケや自然な光の使い方が求められるため、使用するレンズ選びがとても重要です。
この記事では、初心者にもわかりやすくポートレートの基本や撮影のコツ、最適なレンズの選び方からおすすめモデルまでを詳しく解説します。
ポートレート撮影とは?
ポートレート撮影とは、単に人物を写すだけでなく、その人の魅力や個性、感情を写真で表現することを目的とした撮影手法です。写真の主役は人。その人物が際立つように背景をぼかしたり、ライティングや構図に工夫を凝らして、印象的な写真を撮影します。
屋外やスタジオなど撮影シーンによっても雰囲気が変わるため、幅広い表現が可能なのが特徴です。以下ではポートレートの基本について詳しく解説します。
- ポートレートの定義
- 人物写真との違い
- 屋外と室内の違い
- 撮影シーンの例
ポートレートの定義
ポートレートとは、人物を主題にして、その人の表情や雰囲気、内面までも写し取ることを目的とした写真です。単なる記念写真やスナップショットとは異なり、ライティングや構図、背景のボケなどで人物の魅力を強調します。
特に目にピントを合わせることや、被写体との距離感を意識することが重要です。表情や仕草の一瞬を切り取ることで、その人らしさを引き出すのがポートレートの魅力です。
人物写真との違い
人物写真とポートレートは似ているようで、実は目的に違いがあります。人物写真は主にその人を「記録」するために撮られるのに対し、ポートレートは「表現」が目的です。
例えば証明写真や集合写真は人物写真に分類されますが、ポートレートは被写体の感情や個性、美しさを引き出すための演出が含まれます。アーティスティックな表現が重視される点で、両者には大きな違いがあるのです。
屋外と室内の違い
ポートレート撮影では、撮影場所によって大きく雰囲気が変わります。屋外撮影では自然光を活かし、背景の自然風景や街並みを取り込むことで、開放感のあるポートレートが撮れます。
一方、室内撮影ではライティングや背景をコントロールしやすく、より意図的な演出が可能です。屋外は時間帯や天気に左右されやすい反面、自然な表情が引き出せる利点があり、目的に応じて使い分けることが大切です。
撮影シーンの例
ポートレートはさまざまなシーンで撮影されます。たとえば、公園や海辺などの自然の中で撮る「ナチュラルポートレート」、カフェや部屋など日常空間を活かした「ライフスタイルポートレート」、スタジオでの「ライティングポートレート」などがあります。
また、七五三や成人式などの記念写真も演出次第でポートレートに近い仕上がりになります。シーンごとの特徴を理解することで、より魅力的な写真が撮れるようになります。
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ポートレート撮影のコツ
ポートレートを魅力的に仕上げるためには、撮影技術だけでなく、モデルとのコミュニケーションや構図、光の使い方など、さまざまな工夫が必要です。特に表情の引き出し方や背景処理、光の演出は、作品の印象を大きく左右します。
ここでは初心者でも実践できる、ポートレート撮影を上達させるための基本的なコツを紹介します。
- 自然な表情を引き出す
- 背景のぼかし方
- 光の使い方
- 構図の取り方
自然な表情を引き出す
ポートレートでは、被写体の「自然な表情」を引き出すことがとても重要です。カメラを向けられると緊張してしまう人も多いため、撮影前の会話や笑顔でのリラックスした雰囲気作りが鍵となります。
いきなり撮り始めるのではなく、雑談を交えて緊張を解き、自然な仕草や笑顔が出るタイミングを狙いましょう。撮影者の人柄や距離感が、表情に大きく影響することを意識してください。
背景のぼかし方
被写体を際立たせるためには、背景をうまくぼかすことが効果的です。背景をぼかすことで、視線を人物に集中させることができ、プロっぽい印象の写真になります。背景をぼかすには「F値の小さいレンズ(明るいレンズ)」を使うのがポイント。
また、被写体と背景の距離をあけることで、さらに自然なボケが生まれます。余計な情報を排除し、人物を主役として強調する構図を心がけましょう。
光の使い方
光の当たり方によって、ポートレートの印象は大きく変わります。自然光を使う場合は、直射日光ではなく「日陰」や「窓際の柔らかい光」を活用することで、肌が綺麗に写ります。逆に光が強すぎると影がきつく出てしまい、不自然な印象になることも。
また、レフ板を使って顔に光を当てたり、夕方の「ゴールデンアワー」に撮影するのもおすすめです。光を味方につけることで、写真の雰囲気がぐっとよくなります。
構図の取り方
構図はポートレートの印象を決める重要な要素です。基本的には「三分割構図」や「視線の先に空間を作る構図」が使いやすく、バランスの取れた写真に仕上がります。被写体を画面の真ん中に置くときは、背景との対比や左右対称性も意識しましょう。
また、目線の高さを変えたり、斜めから撮ることで、写真に動きや個性を加えることができます。マンネリにならないよう、いろいろな角度から撮影してみましょう。
ポートレート撮影のレンズを選ぶ時のポイント
ポートレート撮影では、レンズの選び方が仕上がりに大きく影響します。焦点距離やF値、使用するシチュエーションによって、最適なレンズは異なります。特に初心者は、どのレンズを選べばよいのか迷いがちです。
ここではポートレートに向いているレンズの選び方について、基本的なポイントをわかりやすく解説します。
- 焦点距離は何ミリが最適?
- F値とボケ感の関係
- 室内撮影での注意点
- 初心者に適したレンズ
焦点距離は何ミリが最適?
ポートレートにおすすめの焦点距離は「85mm前後」と言われています。この焦点距離は被写体の顔が自然なバランスで写り、背景をしっかりぼかすこともできるからです。50mmはより日常的な雰囲気が出せ、135mmはより圧縮効果で印象的な写真になります。
広角すぎると顔が歪んでしまうため、35mm以下は人物全身を含めた環境ポートレートに向いています。目的に応じて使い分けましょう。
F値とボケ感の関係
F値とは、レンズの絞りを示す数値で、F値が小さいほど多くの光を取り込み、背景が大きくぼけます。ポートレート撮影ではF1.4やF1.8などの明るい単焦点レンズが人気です。被写体にピントを合わせつつ背景をやわらかくぼかすことで、主役が引き立つ美しい写真に仕上がります。
ただし、開放での撮影はピントが非常に浅くなるため、目にしっかりピントを合わせることが大切です。
室内撮影での注意点
室内でのポートレート撮影では、光量が不足しがちで、シャッタースピードが遅くなり手ブレや被写体ブレが起きやすくなります。そのため、F値の小さい明るいレンズ(例:F1.8以下)が有利です。
また、撮影距離が確保しづらい室内では、50mmや35mmなど、やや広めの焦点距離のレンズが使いやすいです。背景に生活感が出やすいので、構図に注意して整理された背景で撮影しましょう。
初心者に適したレンズ
初心者におすすめなのは、価格が手ごろで扱いやすい50mm F1.8の単焦点レンズです。「撒き餌レンズ」とも呼ばれ、各メーカーから高コスパモデルが多数出ています。
軽量で持ち運びしやすく、F1.8の明るさで背景もしっかりぼけるため、初めてのポートレート撮影でもプロっぽい仕上がりになります。まずはこの1本から始めて、撮影に慣れてから他のレンズにステップアップするのがおすすめです。
ポートレート撮影用レンズの人気メーカー
ポートレート撮影に適したレンズを選ぶ際、メーカーごとの特長を知っておくことは重要です。各メーカーは描写力やボケ味、操作性、価格帯などに個性があり、目的や好みに応じて選ぶことができます。
ここではポートレート撮影で人気のある4つの主要メーカーの特徴を紹介します。
- Canon:自然な色再現と美しいボケ
- Nikon:高精度な描写力と神レンズの存在
- Sony:高速AFと最新テクノロジー
- シグマ・タムロン:高コスパで選ばれる
Canon:自然な色再現と美しいボケ
Canon(キヤノン)のレンズは、肌の色が美しく自然に写る色再現が魅力です。特にポートレートでは、やわらかく滑らかなボケ味が得られる「RF85mm F1.2L USM」などが評価されています。
オートフォーカスの精度も高く、初心者からプロまで幅広く支持されています。また、EFマウントやRFマウントのラインナップも豊富で、自分に合った1本を見つけやすいのも特長です。
Nikon:高精度な描写力と神レンズの存在
Nikon(ニコン)のレンズは、繊細で高解像な描写に定評があります。肌の質感や髪の一本一本まで丁寧に再現できるため、ポートレート撮影でもプロからの信頼が厚いです。特に「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」は、通称“神レンズ”とも呼ばれる高性能レンズで、美しいボケと立体感のある描写が魅力。
Zマウント対応の最新レンズは、ミラーレスカメラとの相性も抜群です。
Sony:高速AFと最新テクノロジー
Sony(ソニー)はミラーレス市場をリードするメーカーであり、レンズも高性能なものが揃っています。特に「FE 85mm F1.4 GM」や「FE 50mm F1.2 GM」などのG Masterシリーズは、滑らかなボケとシャープな描写を両立。
さらに、ボディとの連携による瞳AFの精度も非常に高く、ポートレート撮影において大きな武器になります。最新技術を活かした機能性重視の人におすすめです。
シグマ・タムロン:高コスパで選ばれる
サードパーティメーカーのシグマやタムロンは、純正に比べて価格が抑えられていながら、描写力やボケ味が非常に優れている点が人気の理由です。シグマの「85mm F1.4 DG DN Art」や、タムロンの「70-180mm F/2.8 Di III VXD」などは、コストパフォーマンスに優れた名レンズ。
高品質なポートレートを撮影したいけれど、予算を抑えたい方に特におすすめのメーカーです。
ポートレート撮影用レンズ人気おすすめ10選
ここでは、ポートレート撮影用レンズ人気おすすめ10選を紹介します。
SONY 単焦点レンズ E 35mm F1.8 OSS ソニー Eマウント用
コンパクトで軽量ながら、高画質と美しいボケ味が楽しめるEマウント用の単焦点レンズです。F1.8の明るさにより、室内や薄暗い場所でもシャッタースピードを保てるのが魅力。手ブレ補正機能(OSS)も搭載されており、初心者でも安心して使えます。35mmの画角はポートレートから日常スナップまで幅広く対応し、1本持っておくと重宝する万能レンズです。
Nikon 単焦点レンズ AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
軽量で高コスパなポートレート向けの標準単焦点レンズ。F1.8の明るさにより、柔らかいボケ味を生かした背景処理が可能です。ナチュラルな画角で、人物の表情や雰囲気を自然に写し出します。静音性の高いオートフォーカス(SWM)も搭載されており、撮影時のストレスが少ないのも魅力。初めての単焦点レンズとしてもおすすめです。
Zeiss Ikon C Sonnar T* ZM 1.5/50 標準カメラレンズ
クラシカルな設計を持つツァイスの名レンズ。F1.5の明るさと美しい光のにじみが特徴で、ポートレートに独特の柔らかさと深みを加えます。マニュアルフォーカス専用ながら、フォーカスリングの精度が高く、じっくりと撮影を楽しみたい人に最適。Mマウント対応でライカなどのレンジファインダーカメラとの相性も抜群です。
タムロン 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD ソニーEマウント用
ズームレンズながらF2から始まる驚異の明るさを誇る万能ポートレートレンズ。35mmから150mmまでの幅広い焦点距離で、1本で引きの全身からアップのバストショットまで対応可能。高速・高精度なAFを実現するVXDモーター搭載で、動きのある被写体も捉えやすいのが魅力。屋外ロケやイベント撮影にも活躍する実力派レンズです。
Carl Zeiss 単焦点レンズ Otus 1.4/55 ZF.2
圧倒的な解像力と美しいボケで知られるCarl Zeissの最高峰レンズ。F1.4の大口径により、極上のボケと立体感を表現可能。収差の少ないクリアな描写はプロカメラマンからも高い評価を受けています。マニュアルフォーカス仕様ですが、緻密なピント合わせで作品づくりに集中できる1本。Nikon Fマウント対応です。
パナソニック 交換用レンズ LUMIX G MACRO 30mm F2.8
マイクロフォーサーズ規格に対応したマクロレンズですが、ポートレート用途でも優秀。コンパクトながら高い描写力と自然なボケ感が魅力で、肌の質感や表情を美しく表現できます。近接撮影にも強く、小物を取り入れたポートレートにも対応可能。軽量設計なので長時間の手持ち撮影でも扱いやすく、屋外ロケにも最適な一本です。
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8
マイクロフォーサーズ用の標準レンズで、35mm換算で50mm相当の自然な画角を持つポートレート向きレンズです。F1.8の明るさで背景をやわらかくぼかし、被写体を引き立てます。高速で静音性に優れたオートフォーカスにより、スムーズな撮影が可能。軽量かつコンパクトで、初心者にも扱いやすく、日常から本格撮影まで幅広く対応します。
シグマ(Sigma) SIGMA シグマ Canon EF-Sマウント
シグマは高コスパかつ高性能なレンズで人気のブランド。EF-Sマウント対応モデルは、APS-C機に最適化されており、コンパクトながら明るくシャープな描写が特徴です。ポートレート撮影では柔らかなボケと精細な描写が両立され、価格以上のクオリティを発揮。純正レンズに手が届かない初心者やコスパ重視の方におすすめです。
Canon 単焦点標準レンズ RF50mm F1.2L USM EOSR対応
キヤノンRFマウントの中でも最高峰に位置するLシリーズの大口径単焦点レンズ。F1.2の明るさにより、非常に美しいボケ味と立体感が得られます。ナノUSMによる高速・高精度AFで、動きのあるポートレートも難なく対応。色再現やコントラストも非常に優れており、プロの現場でも信頼される一眼。EOS Rシリーズユーザーにとっては憧れの1本です。
キヤノン Canon 標準 単焦点レンズ EF50mm F1.8 STM
通称「撒き餌レンズ」として人気の高い、コスパ抜群の標準単焦点レンズです。F1.8の明るさにより、初めてでも背景をしっかりぼかした本格的なポートレートが撮影可能。STMモーターにより静音性にも優れ、動画撮影にも適しています。軽くて持ち運びやすく、初心者のステップアップレンズとして非常におすすめです。
まとめ
ポートレート撮影では、被写体の魅力を最大限に引き出すためにレンズ選びがとても重要です。焦点距離やF値を意識することで、背景を美しくぼかし、印象的な1枚が撮れます。
今回紹介したおすすめレンズや撮影のコツを参考に、自分に合った1本を見つけて、ポートレート撮影をもっと楽しんでみましょう。カメラ初心者でも、レンズを変えるだけで写真の表現力がぐっと広がります。